不合理な処遇の差とは

2026年10月1日法改正「同一労働同一賃金ガイドライン」により、 賞与・退職金・各種手当・福利厚生、特に家族手当、住宅手当、夏季冬季休暇などの扱いが明確化されます。

顧問先のB社長と打ち合わせをした際のやりとりについて、類似のケースが多くの会社であるのではと思いましたので、一部ご紹介いたします。

質問:「うちは長年、夏季休暇は正社員のみの制度でやってきた。正社員はシフト全体のバランスを見ながら自分の休みをずらしたり、トラブル対応の責任も負っている。正社員以外の方はシフト通りに働いて、希望の休みもしっかりとれている。責任の重さが違うから、休暇制度に差があっても許されるのでは?」

B社長の会社は美容室やサロンを経営しており、正社員、週5日フルタイムで正社員と同じ現場業務を担う契約社員、月10日のパートタイマーという3つの雇用形態があります。

B社長のご質問はごく自然な疑問であり、同じように考える経営者様も多くいらっしゃるのではと思います。

そこで私は、法改正の基となった判例について触れました。

有期契約社員に正社員と同じ夏期冬期休暇を与えないことが「不合理な労働条件の禁止(旧労働契約法20条)」に違反するかどうかについて(日本郵便事件・令和2年10月15日最高裁判決)

【判決の趣旨】 夏期冬期休暇は、労働者の心身の回復、疲労の回復やリフレッシュを図ることを目的として付与されるものであるから、相応に継続的な勤務が見込まれる労働者であれば、職務内容や変更範囲(異動や役割の変更等)の違いにかかわらず、同様に疲労回復やリフレッシュの機会を与える必要性がある。 したがって、正社員と勤務形態や契約更新の状況が同等である場合、有期契約社員に対して夏期冬期休暇を付与しない(あるいは日数を著しく不相応とする)ことは不合理と認められる。

裁判では、「休暇」は業務上の責任に対する対価ではなく、「一定期間働いたことに対するリフレッシュ」を目的とするため、正社員だけに限定するのは不合理と判断されました。

この判例の考え方をお伝えしたところ、B社長は深く納得され、こうおっしゃいました。

「なるほど……“その制度が何のためのものか”という目的で考えなさいということだね。それなら、夏季休暇は契約社員にも付与して、その代わり正社員には『役割や責任の重さ』に見合った手当などでしっかり処遇の差をつけなきゃいけないな。よし、賃金表を見直そう。」

「差をつけるものとつけないもの」が整理できたことで、制度変更に着手する理解の速さには、いつもながら感服いたします。

「差を無くす」のではなく「役割に応じたメリハリをつける」こと

同一労働同一賃金とは、決して「働く人の待遇を正社員とそろえる法律」ではありません。「リフレッシュ、疲労回復のための休暇」のように差をつけるべきでないものは一律に、「責任や役割の違い」がある部分は正社員を正当に評価してしっかりと差をつける。制度のメリハリを明確にすることこそが、本質です。

10月施行に向けた準備

  1. 労働条件通知書・雇用契約書の様式改定
    10月1日以降の雇い入れ・更新から新様式へ切り替えます
  2. 手当・休暇の「棚卸し」と「趣旨」の確認
    制度ごとに「何のために存在するのか(リフレッシュか、責任への対価か)」を客観的に確認します
  3. 説明用資料の整備
    「なぜこの待遇差があるのか」を職務内容・責任・配置変更の範囲から説明できる資料を用意しておきます

おわりに

説明できない待遇差は不合理=リスクとなってしまいます。しかし逆を言えば、「なぜ差があるのか」を整理することは、正社員の役割の重要性を再確認し、会社全体の処遇体系をより納得感のあるものへ進化させる絶好の機会でもあります。

「自社の手当や休暇制度を見直したい」「説明資料を一緒に作ってほしい」という経営者様は、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。貴社の働き方の実態に寄り添った、納得感のある解決策を一緒に考えましょう。